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秋葉原におけるメイド喫茶・コスプレ喫茶の歴史 |
【お読みいただく前に】
本文中の誤りについては、ご指摘いただければ速やかに訂正したい。
(追記) 2003年5月以降の情報をお求めの方へ
1998年 (平成10年) #
大人気ゲームソフト「Piaキャロットへようこそ!!」シリーズ。その第2作目である「Piaキャロットへようこそ!! 2」(カクテルソフト、1997年10月発売)は、キャラクターや制服のかわいらしさで人気を博した作品だ。このほかにも人気作品を多数抱えるエフアンドシー(注1)は、1998年8月に行われた「東京キャラクターショー1998」(主催:ニッポン放送)に出展。これと同時に、キャラクターコンテンツ業者のブロッコリーも「Piaキャロットブース」を出展、ブース内に「Piaキャロ」の舞台となるレストラン「Piaキャロット」の装飾を施した喫茶店を設置し、コスプレをしたコンパニオンが軽食と飲み物の販売を行った。 「Piaキャロット」を実際に作ってしまったこの企画は、驚きをもって迎えられ、好評を博した。そして、このイベントが後のメイド喫茶・コスプレ喫茶へとつながってゆく。
(注1) 「カクテルソフト」「フェアリーテール」などの人気ブランドを抱えるゲーム会社。 #
昨年のキャラクターショーから約1年後の1999年7月22日、ブロッコリーは自社が経営するキャラクターショップであるゲーマーズスクエア店のイベントスペース(6階)に、「Piaキャロレストラン」を期間限定でオープンした。秋葉原初のコスプレ喫茶となった同店は大きな話題を呼び、再び期間限定で、同年12月から翌年2月1日(?)まで営業した。
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ブロッコリーは1999年11月25日、秋葉原地区の旗艦店となるゲーマーズ本店を中央通りに出店。その3ヵ月後の2000年2月中旬、本店7階に「ゲーマーズカフェ」をオープンした。 また、ゲーマーズスクエア店においては、2000年3月中旬より「Piaキャロレストラン」を再々度オープンし、4月末まで営業を行った。この後を受けて5月初めにオープンした「Cafe de COSPA」(カフェ・ド・コスパ)は、「Piaキャロレストラン」の路線をほぼ継承し、常設の店舗になった。リニューアルによる変更点としては、Piaキャロだけに留まらず、多様なコスプレが見られるようになったことが挙げられる。
2000年8月、神田駅前の居酒屋「蔵 太平山」が毎週日曜に限ってコスプレ居酒屋を営業するサービスを開始した。このサービスは評判を呼び、予約を入れなければ入店できないほどの人気を得た。
(注2) ゲーマーズカフェについては、店員は常にコスプレをしているというわけではなかったらしい。詳細は不明。 #
2001年3月末をもって店舗の運営権がゲーマーズからコスパに移譲されることになり、「Cafe de COSPA」は3月18日をもって閉店した。その後のリニューアルを経て、同月30日に、コスパの経営する「Cure Maid Cafe」(キュアメイドカフェ)がオープンした。このリニューアルにより、ウェイトレスのコスチュームがメイド服に統一され、秋葉原初のメイド喫茶がここに誕生した。 同店のオープンについて報じた記事(注3)によれば、同店は“癒し”をコンセプトとしているという。コスパ社長の橋本氏は「ことの始まりは“秋葉原にはゆっくりできて、ちゃんとした食事をできるところがないよね”ということだったんですよ」と述べており、写真撮影が原則禁止になるなどのコンセプトチェンジも図られた。
2001年6月30日、廣瀬本社ビルの4階にインターネットカフェの「Necca 秋葉原店」がオープンした。同店は、Necca各店の中で唯一、ウェイトレスの制服にメイド服を採用している。この制服は「秋葉原ではメイドさんの格好が人気があるので採用した」とのこと(注4)。コスチュームがメイド服であるのを除けば、いたって普通のインターネットカフェである。
2001年も終盤にさしかかった11月、電気街からは少し離れた台東区台東1丁目に「ひよこ家」がオープンした。「メイドcafe&居酒屋」をうたう同店は、夜10時までの営業や酒類の販売を行うなど文字通り「居酒屋」であるほか、企業経営ではなく個人経営であるのが特徴。写真撮影が可能で、コスプレ喫茶・メイド喫茶としては初めて、季節もののコスプレ(ゆかたなど)をイベントとして行うなど、親しみやすいサービスを提供した。同店のオープンにより、秋葉原はさらに「メイド喫茶のある街」として注目されるようになった。
(注3) MZNEWS「秋葉原に新名所!「CURE MAID
CAFE」オープン!!」(2001年3月29日) http://www.mangazoo.jp/news/news.php3?id=561 #
アキハバラデパートの業態転換にともない、デパート3階に作られた「アキデパフジヤマ」直営の喫茶店が「アキバカフェ」である。フジヤマのイベントスペースも兼ねる同店は、ガンダムゾーンの隣に設置されていることもあり、サイバー感を演出した内装で、店員の制服にはアニメに登場するような軍服タイプとサーバーメイドタイプの2種類のコスチュームが用いられた。
販売不振にあえぎ、全国展開した店舗のほぼ全てを閉店した大手PCショップのT・ZONE.は、収益向上策としてアミューズメント事業を強化する方針を打ち出した。同社は2002年7月19日、昌平橋通り沿いのビルにコスプレ喫茶「Mary's」(メアリーズ)をオープンした。同店のウェイトレスは、昼はメイド服、夜はそれぞれ独自のコスプレをするのが特徴。同年8月25日からは、「1Dayイベント」という限定イベントを毎週水曜日に開催して様々なコスプレを披露するなど、話題作りに積極的である。同店の運営については、ウェイトレスやスタッフの意見を積極的に採り入れており、同年10月に行われた「Cafe Mai:lish」(カフェ メイリッシュ)への店名変更も、ウェイトレスとスタッフの話し合いによって実現したとのこと。 同店のオープンは、マニアたちの話題をさらっただけでなく、メイド喫茶の存在を一躍、世に知らしめる影響をもたらした。「メード喫茶」が新聞紙上にキーワードとして取り上げられた(注6)のは、T・ZONE.のような老舗企業が参入したためであり、それは同時に、変貌する秋葉原の姿と重ねあわせるように注目された。
2002年7月20日から8月30日までの期間限定で、ゲーマーズカフェは「朝霧の巫女(注7)カフェ」として営業した。巫女のコスプレ店員は、単発イベントを除いて秋葉原では初めてのことである。 その後ゲーマーズカフェは、ブロッコリーが手がける「ギャラクシーエンジェル」をコンセプトにした喫茶店「G.A.カフェ〜エルシオール喫茶室〜」として、同年10月26日にリニューアルオープンした。このリニューアルについては、イベントの終了期間を示さず、店舗紹介においてもゲーマーズカフェという名称を用いなかった。 2002年になって突如、本店1号館(旧本店)のゲーマーズカフェに積極的な展開が見られたのは、同年7月23日、駅前にオープンした本店2号館との差別化を図る目的や、開店前より話題を呼んでいた「Mary's」の影響があったものと思われる。
(注6) 「日経流通新聞」2003年3月27日付 #
月に5000人が来店し、時には入店待ちの行列を作るほどの盛況を見せる「Cafe Mai:lish」。こうした人気を受けてT・ZONE.は2003年2月14日、2号店を吉祥寺にオープンした。 また2003年3月12日、T・ZONE.は経営戦略の転換を図るため、組織改編を実施。「Cafe Mai:lish」の経営などを行うアミューズメントコンテンツ事業部を、子会社でゲームソフトの流通などを手掛けるジェイ・ノードに移管した。
秋葉原地区の店舗再編のため、ゲーマーズ本店1号館は2003年4月6日に閉店し、7階の「G.A.カフェ〜エルシオール喫茶室」も同時に閉店した。本店1号館内の施設については、デュエルルーム(注8)は駅前・宝田ビルの本店2号館(現本店)に移設されたものの、ゲーマーズカフェは移設されず、ゲーマーズ直営の喫茶店は秋葉原から姿を消した。
秋葉原の裏通りに完成した新築のイサミヤ第8ビルに、2003年5月3日、メイド喫茶「Cos-Cha」がオープンした。同店は飲食を重視した路線で、写真撮影は不可、店内滞在時間に制限があるなど、メイリッシュと同様のルールを設けている。経営母体の詳細は不明だが、「ラグーン」という東日暮里の“オンライン日焼けサロン”がウェブの管理を行っており、「Cos-Cha」を「当店関連企業」としている。 また、「Cos-Cha」と同じビルの4階には、まんが喫茶の「Laplace」が5月2日オープンした。まんが喫茶+メイド服という組み合わせは秋葉原でも初めてであり、成功の可否が注目される。営業時間は朝8時から夜23時までで、5月末からはイベントを実施するもよう。経営を行っているのは、千代田区岩本町のライトクリエイトという企業のようだ。
秋葉原におけるコスプレ喫茶のルーツは、東京キャラクターショー1998の「Piaキャロットブース」にあるようだ。しかし、店舗としてではなく、単発のイベントとしては、「Piaキャロ」よりも以前に同人誌即売会などでコスプレ喫茶が実施されていた可能性もある。 ブロッコリー自身が、これ以前のイベントでもコスプレ喫茶を実施していた可能性もあるが、1998年の「Piaキャロ」がとりわけ大きな注目を集めるに至ったのは、大人気ゲームのレストランを現実に作ってしまったからだ。「Piaキャロットへようこそ!! 2」が超人気作だったからこそ、それを模倣したコスプレ喫茶という企画が実現し得たのであり、その結果として、コスプレ喫茶に需要があることを企業側が理解し得たのではないか。こうした段階を経ていなければ、コスプレ喫茶の出現はもっと遅れていたかもしれない。 また、注目したいのは、ブロッコリーという企業の特質である。同社はかつて、コスプレダンスパーティーなどのイベントを企画していたこともあり、コスプレやイベントに理解のある企業だ。そして、自社経営のキャラクターショップを持ち、これを積極的に展開する勢いがあった。 「秋葉原のカフェは、どの会社も真似できないような面白いことをしようという意図で始めました。企画は上がってきても、それを実行に移すことは難しいことだと思いますが、秋葉原だからこそできたという面はあります。秋葉原はデ・ジ・キャラットのネオンを許容するような、いい意味で『冗談が分かる』街だと思いますから」 コスプレ喫茶は、ブロッコリーだからこそ初めて実現できたものであることがわかる。そしてなにより、秋葉原という特別なマーケットがあるからこそ、このような特殊な店舗がオープンできたのはいうまでもないだろう。
「Piaキャロットへようこそ!!」(第1作目は1996年7月発売)が制作されたのは、同作のシナリオを担当した稲村竜一氏が“アンナ○ラーズ”からヒントを得たのがきっかけであるという。そして、そのゲーム上の「Piaキャロット」が、現実の世界にコスプレ喫茶を誕生させるきっかけとなったというのも、なかなか興味深い経緯ではないだろうか。
本文を書くにあたり、同人誌即売会の事情について長月蒼龍氏にご相談させて頂いた。また、輪王ひろみ氏からは、本文について様々なアドバイスを頂いた。突然のお願いにもかかわらず、力を貸してくださったお二人に深くお礼を申し上げたい。
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(参考) 秋葉原の外部におけるメイド喫茶・コスプレ喫茶の動向
(*) 匿名で筆者宛てに寄せられた情報をもとにしている |
■秋葉原のメイド喫茶・コスプレ喫茶に関する文献 (新聞・雑誌) (ウェブ) *店舗の登場順 (映像) ■秋葉原外部のメイド喫茶・コスプレ喫茶に関する文献 (ウェブ) *順不同 ■その他、「Piaキャロット」に関する文献など (書籍・会報) (新聞・雑誌) (ウェブ) |
(付録) メイド喫茶・コスプレ喫茶の店舗データ
(2003/05/26) 公開 |